Dec
8th
Tue
8th
そしてそこに実は気をつけるべき点がある。集合知とか「みんなの意見」というと、何かそういう意見や知識が自然に実体的に存在するような印象を持ちやすい。でも実は「みんなの意見」は、かなり高度な手法でだれかが作り上げるものだ。自然に生まれる合意のようなものではない。その意味で、個人的にはこの種の集合知を民主主義とつなげて論じるありがちな議論に、少し疑問を抱いている。
たとえば「集合的にベストな意思決定は意見の相違や異議から生まれるのであって、決して合意や妥協から生まれるのではない」(p.18)と本書は言う。意見集約には投票すべきなのだそうだ。でも、何でも投票で片付けて少数意見を切り捨てるのが民主主義ではないのも当然だろう。妥協と合意のない政治などあり得ない。その意味で著者の言う集合知や「みんなの意見」は、実は究極のところで民主主義とは似て非なるものなのかもしれない。その「意見」が集約され、作り上げられるプロセスには、ものすごく警戒が必要なはずなのだ。
みんなの意見の意義と限界:『「みんなの意見」は案外正しい』解説